夢の中で、しゃくりあげて泣いた。蹲って頭を地面にこすり付け、どうにももんどりうちながら只管声をあげて泣いた。理由は忘れた。空は曇っていて、何やら工場のような場所にいた。仲間が二人寄ってきて(誰であったのか覚えていない)、ぼくの背中を撫でた。ぼくは頭の中で熱い鉄球がごろごろと動いているのを感じた。それは確かに、熱せられた鉄球であった。ぼくの頭は内側から熱を与えられ、衝撃を受けた。眼球の裏の視神経を刺激し、首元の背骨にも震動は伝わった。寒くはなかった。ただぼくは半ば痙攣して涙を流し続けた。鉄球を冷やすために。
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ぼくがぼく自身であるということは、例えば、誰かに腹が立ちそうなシーンにおいても、自分はきちんと自らの立場を見失わないということだ。腹が立つのは、自分が相手の土俵に立つからだ。すなわち、聞こえの悪い言い換えをすれば、相手のレベルに合わせるということだ。それでは気に食わないこともあろう。
期待をしないことだ。距離をきちんと計ること。『必要なものは感性ではなく、ものさしだ』と極端な文章もあるほどだ。ぼくは人との、或いは物事とのあいだに横たわる距離を慎重にはかることで、彼らとの関係に最大限の効果を求めようとしている。人と関わることで、ぼくらはそれぞれの思想に栄養を与えあうことができるのだ。
所詮、他人なのだ。こういうとひどくぼくが人でなしのように響くが、けれども事実だ。第一、自分でもなお大して把握できているわけでもないぼくという人間について、ほかの誰かが理解し尽くすことのできるはずがなかろう。然れば仲違いのきっかけはそこかしこに転がっていて当然なのである。かくして、ぼくは彼らを大切に思うが故に、彼らとの距離を一等真剣に考えるわけだ。
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髪を切った。寒い。
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