思えばぼくらはおよそ十年来の友人になっていた。ぼくらはそれに心底驚いた。十年というのは長い時間だ。住んでいる場所も立場もそれぞれの中で、一年に一度か二度しか会えない中で、かくも心を許せる彼ら。
ぼくは彼らの前でこそ、自分自身でいられる気がするのだ。
生きているのも悪くないと思えるのは、幸せなことだ。
ヒグラシが鳴いて、クツワムシが鳴いた。サカタは煙草を片手に女の子の話をしていた。カンタは酒に顔を赤らめて結婚の話をした。就職の話をして、学校の話をして、かつての話をして、将来の話をした。
「一生、毎年こういう具合に集まりたいね」と口をそろえた。
奥さんができたら六人で、子供ができたら三家族で。年をとったらリッチなホテルで。そういった話は希望そのものである。希望というのはやはり、愛すべき他人との間にこそあるものなのか?
生きているのも悪くないな、と思った。
それから、Eの話をした。ぼくは彼女に会いたい、と思った。ぼくらにはまだ話すべき幾つもの物事があるはずだ。夜を徹して、只管に話をしたい。そう心から思う。
なんだろう、不思議な気分だ。
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