―小林秀雄「秋」
驚いたが、がっかりもした。ぼくの感じたことは、やはり多くの人に同様に感じられたものだ。これまで無数の人間が感じたことを、ぼくは苦しんで苦しんで、漸く言葉にしているに過ぎない。小林はいとも容易くそれを表現している。紛失する上手下手が即ち時そのものだ。まさにそうなのだ、しかしぼくにはそこまで至れなかった。ハッとさせられた。やはり彼はすごい。
だってぼくはかくも姥貝ているのに…彼の背中すら見えやしないわけである。
明日、Mを含んだ幾人かに再会する。もっとも、今度の帰省はそのためだけのものである。先日のキャンプで、昔話をしたいなという話になった。それが早くも実現しようとしていた。一年間の浪人生活を過ごしたぼく以外のメンバーは、来年そろって新しい環境に身を置く。大学院、社会人、別の大学。来年度から、ぼくらが全員揃うことは今よりもずっと難しくなるだろう。だからこそ、早急な集合がかけられた。ぼくははるばる神奈川から二晩だけ。Mは北陸から当日直接合流する。ぼくらは変わった。九年。ぼくらは変わった、しかし一方で、おそらく一堂に会して、お互いの変わらない側面を発見することだろう。そうしてそれは、それぞれにとっての励みになるはずなのだ。
正直なところ、困惑している。
どう振る舞えばいいのだ?口内炎がひどく傷む。
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