生きると言うのは、なんと苦しいことなのだろうか。マンドリンの音が暗闇の中を滑って行くと、ぼくには時間の過ぎていくことが途端に痛く感じる。ぼくの生はフロアリングの上にぽとりと落ちて、過去から未来へとゆっくり転がっていく。この時間は二度と訪れはしない、それはもう、古代からすり減るほどの回数、認識されてきた概念だ。けれども、そうなのだ。このどうしようもない倦怠、時間があるからこそぼくらは一人ぼっちなのではないか。縋ることはできやしない。女の子も去っていく、時間と同じように。一人を抱いていたって、すぐにそれは朽ち果てる。そうすればぼくはまたひとりだ。
二つに折れたつま楊枝を山のように積み上げた。ぼくは毎晩のように彼女の夢を見る。自分でも情けが無い。気持ちが悪い。けれども仕方のないことだ。眠れない中でふとした瞬間に陥る微睡みの中で、彼女はいつも楽しそうにしている。それがぼくには嬉しかった。
マンドリンが薄れて、消える。厳密に言えば、それは消えたことを気づかせないほどに繊細な終わりだ。沈黙の音が窓の外にして、ようやくぼくはそれに気が付く。そうすれば一安心だ。目を閉じて、眠れなくたっていいから、じっと考えるのだ。そうすればやがて朝が来るはずだ。
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