2013/05/22

背骨の軋む夜

 暑い日が続いている。ぼくは毎朝八時ごろには目を覚まして、洗濯をして、シャワーを浴びて、講義に出かける。自転車で十分も漕げばキャンパスに着くが、それでも汗ばむほどに、日差しは強い。空いた時間は食堂に行ったり、図書館で文章を書いたりしている。
 研究会で英語教育の話と、防災の話をしている。ぼくはきっとそれら二つをいっしょくたにして研究することが有効だろうと考えていたけれど、少しずつ、何となくずれ始めている。特に英語教育の方だが、二期目にして未だ内容に発展がうかがえない。

 ぼくが研究したいのは、災厄の表象についてだ。特に、文学。震災や戦争や、もっと抽象的に言うなれば喪失や死について描かれた文学について、本質的なレベルにおいて研究をしたいと思う。すごく興味のある分野だが、しかし如何せんぼくは勉強が嫌いだ。

 UCLAへ留学をしていた友人が先週帰国した。会いたいと言われたが、ぼくは会いたくない。なんだか遠くへ行ってしまったような気がするのだ。「何も変わっちゃいないよ」とは言うのだけれど、なんだろう、きっと怖いのだ。

 自分の矮小さが見え隠れして我執の皿から零れ落ちそうな近頃、夜半には正体不明の焦燥感が訪れる。知らず内に、そこはかとない重圧が、少しずつぼくのことを押しつぶそうとしている。みしみしと軋む音がする。きっとぼくの背骨だろう。

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